量子テクノロジー: 量子通信で活躍するレーザー
量子情報分野におけるレーザーの役割
- 量子コンピュータ
- 量子テレポーテーション
- 量子暗号
- シングルフォトン&量子もつれ光子
科学者がこの目新しい理論が人類にもたらす可能性のある利点に気づき、早速議論を始めたのは、量子論が定式化され受け入れられてからわずかな時間が経過した後でした。 おそらく量子論の最も有名なアプリケーションである量子コンピューターは、従来は不可能だった究極的に複雑な計算問題を実用可能にする、かつて信じられないほどの計算速度に到達することが期待されています。 結合された量子力学システムは量子コンピューティングに使用でき、その活用方法が議論されています。ソリッドステートシステム、イオントラッピングシステム、光格子内原子、および線形光学要素を持つ光子システムは、現在最も期待され、量子コンピューター研究の中心的話題です。 最初の体系的な量子制御はソリッドステートシステムとイオントラッピングシステムで既に実証されていますが、各方式間の激しい競争はまだ続いています。
量子テクノロジーの基礎
量子コンピューティングの技術的な基礎はシステム内の「ある部分」の状態が全く別の系における「ある部分」の状態に完全にリンクされている、いわゆるシステムの量子力学的特性である「エンタングルメント(もつれ)」で言い表すことができます。 有名な「シュレーディンガーの猫」の例は奇妙な「もつれ」が日常生活の経験とどのように比較されるかを単純に視覚化しようとした好例です。 アインシュタインでさえこの量子の奇妙な性質には非常に懐疑的で、彼と彼の同僚であるポドルスキとローゼンは1935年にひとつの論文を発表しました。この論文では、量子論はまだ完全ではなく「隠された」変数を含む別の理論に置き換える必要があることを証明しようと考えました。 彼らの「EPRパラドックス」の議論は、量子力学が実際に完全であることを示したベル(「ベルの不等式」)によって最初に理論的に訂正されました。 今日まで、ベルの不等式は実験的に何度も検証され支持されてきました。 量子の性質を完全に記述するために隠れた変数は必要ありません。
奇妙な量子のもつれが持つ特性は量子テレポーテーション(ある場所のあるシステムから別の場所の別のシステムに量子力学的状態を転送する)と量子暗号技術の基礎でもあります。後者の目的は完全に安全な方法である場所から別の場所に情報を送信することです。 明らかに、量子暗号装置は非常に強力で重要な情報通信ツールと考えられます。量子暗号は唯一の量子もつれ光子にほぼ依存しており、その有効性は高く評価され、すでにこの手法を用いた通信機器が商品化されています。
量子コンピュータの高速性
量子コンピューティングは、従来のコンピュータでは決して到達できない速度での計算、シミュレーション、または情報操作を可能にすることが期待されています。例えば量子コンピューターは従来のコンピューターよりもはるかに高速にデータベース検索や多数の因数分解を実行できることが理論的に示されています。量子コンピューターの巨大な計算能力は2つの主要な要素の結果です。第一の要素は、基本的な情報は量子ビット(QuBit)と呼ばれる量子力学的な2つの状態システム(| 0>と| 1>)で構成され、0または1で表される古典的なビットとは異なり、また (a|0> + b|1>)のように2つの系における任意の重ね合わせ状態を作り出すことが可能です。
第二の要素は、基本的な計算はそのような重ね合わせ状態に作用するコヒーレントな操作を用いる点です。このようにして、| 0>と| 1>の間のすべての可能な状態を同時に計算でき、高度な並列計算が実現されます。コンピューティングの基本的な操作であるゲート操作は、トラップされたイオンと光子ベースの量子コンピューターで示されました。ソリッドステートシステム(NMR)を使用して、数値15の量子計算による因数分解の原理実証が行われ証明されました。
量子テレポーテーションによる物体の移動
量子テレポーテーションとは、ある物体の量子力学的状態が別の場所にある別の物体に完全に伝達される手順を指します。アインシュタインだけでなく、多くの人を混乱させたエンタングルメント(もつれ)の非局所性を利用しています。巧妙な一連の測定と光子のエンタングルメント操作を使用して、ある光子の偏光状態を別の光子に完全にマッピングすることができます。つい最近、2つの別々のイオントラップを使用して、遠方の物質の量子ビット間の量子テレポーテーションの実例が示されました。量子テレポーテーションと前述の量子コンピューティングに密接に関連しているのはいわゆる「量子論理」です。ここではあるオブジェクトの量子状態に応じて、別のオブジェクトの特定の状態が作成されます。この制御された状態の試験系は、実際にアルミニウムイオンに基づく世界で最高の原子時計の1つを実現するために計測学で使用されました。
量子暗号による安全な通信
量子暗号は量子状態における測定プロセスの量子もつれやバックアクションなどの量子物理特性を使用して、送信者(アリス)と受信者(ボブ)の間の安全な通信を実現します。標準的なアプローチではアリスとボブが重ね合わせられた量子システム(通常はエンタングルされた光子)で測定を実行して、アリスとボブのキー(量子鍵)を作成することで行われます。作成されたコードを使用して実際のメッセージを暗号化および復号化できるため、量子暗号方式は量子鍵配送と呼ばれます。実際のメッセージは測定結果に従ってアリスによって暗号化され、オープンな通信チャンネルを介して(誰でも「聞く」ことが可能な状態で)ボブに送信されます。同様にボブは測定結果に従ってメッセージを復号化します。量子物理法則によれば各測定(=観察者が測定を行うこと自体で)量子力学的状態に影響を与えるため、盗聴、つまり第三者による量子鍵の検出の試みはすべて発見することが可能です。このため盗聴を試みる観察者の存在は常に気付かれることでしょう。その明らかな重要性のために、量子暗号に関する研究は強力な推進力を持ち、これまでに多くの実験結果が達成されてきました。数百kmにわたる光ファイバー網を経由した量子鍵配送、また各都市間を結ぶ、通信衛星と地上局間における空間通信を経由した量子もつれ光子の配信などが試みられています。その実際の有効性を示すため、量子鍵暗号を持ちいた銀行間での海外送金も行われました。
量子コンピューティングと暗号化のための重要なツール
単一またはもつれ状態にある光子の「ソース」は量子コンピューティングおよび量子暗号化にとって重要なツールです。 同時にトリガーされた時間に正確に1つの光子を放出する単一光子源は、例えば以下のような方法で実現が可能です。 固体中のカラーセンターまたはイオン、トラップ状態または光共振器からの単一原子、トラップされたイオンまたは量子ドットシステム、などが挙げられます。もつれ状態光子の最も一般的なソースは自発的パラメトリックダウンコンバージョンに基づいています。 「青色」光子は、非線形光学結晶内で2つの「赤色」光子に変換(ダウンコンバート)されます。 赤色の2つの光子の偏光、運動量、エネルギーには強い相関関係があり、 この方式に関する多くの研究が進行中です。研究の共通の目的は効率的で、理想的には完全に決定論的であるソースの開発と、大量生産の可能性を備えた実現性に焦点を合わせて行われています。
量子テクノロジにおけるトプティカレーザーの「Value」
トプティカ社はイオントラッピングまたは原子を含む量子情報実験に必要なレーザー光源のサプライヤーとして長年の高い評価を頂いています。当社のレーザーは、イオン・原子冷却、光トラッピング、光ポンピング、または光コヒーレント操作など多様なアプリケーションで使用されています。単一光子エミッターを励起するために必要な波長と出力が得られるようスペシャリストの手により精密に製造また調整されています。パラメトリックダウンコンバージョンによってエンタングルされた光子ペアを作成するには、波長変換プロセスを開始するにあたり光子ペアの半分の波長の基本レーザーが必要です。多くの場合、800 nm付近の近赤外のもつれ光子が使用されるため400nm付近の紫色レーザーが必要となります。UV波長領域でのレーザーの開発と製造は当社技術の中核をなすものです。当社はUV半導体レーザーシステムを製造また商品化した最初の企業であり理化学研究および産業用途向けに、線幅特性/コヒーレンス特性および出力レベルが異なるさまざまなレーザーシステムを提供しています。このような広範かつ高品質な製品ポートフォリオを持つレーザーメーカは他にありません。あなたの量子アプリケーションに最適なレーザーを御提案できるよう、多くのレーザーおよびアプリケーション専門家がご連絡をお待ちしています。